ごあいさつ


拠点病院事業担当者
病院教授 榎本 大
 大阪府は依然として肝がんの罹患率が高く、肝疾患対策が重要な医療課題となっています。当院は2008年に大阪府の肝疾患診療連携拠点病院の一つとして指定され、これまで肝疾患診療に注力してまいりました。

 B型・C型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患に対する取り組みは、引き続き重要な課題です。C型肝炎は、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及により、多くの患者さんでウイルス排除が可能となりました。B型肝炎に対しても、核酸アナログ製剤などの抗ウイルス療法を適切に継続することで、肝硬変や肝がんの発症リスクを低減できます。当院では、これらの治療を適切に提供するとともに、未治療の方へのスクリーニングや治療導入の促進にも努めてまいります。

 近年、肝硬変や肝がんの成因は、B型・C型ウイルス性から、生活習慣に関連するMASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)へとシフトしています。この変化に対応するため、当院では生活習慣の改善指導や早期診断・治療体制の強化に取り組んでおります。特に、糖尿病や肥満、高血圧といった基礎疾患を有する方々に対して、多職種による包括的な医療を提供し、肝疾患の予防と進行抑制を図ってまいります。

 また、重度の肝硬変や肝がんに対する診断・治療技術は目覚ましく進歩しています。内科、外科、放射線科が緊密に連携し、最先端の治療を提供できる体制を整えております。すべての患者さんに最新の医療の恩恵を届けるため、個々の病状に応じた最適な治療戦略を提案してまいります。

 さらに、かかりつけ医や専門医療機関との密接なネットワークを構築し、医療連携のための講演会や医療従事者向けの勉強会を定期的に開催しています。また、患者さん向けの肝疾患相談支援センターを設置し、「市民公開講座」や「肝臓病教室」を通じて啓発活動や最新の肝疾患医療情報の提供にも努めております。

 今後も、地域の皆様に信頼される医療を提供し、B型・C型肝炎の対策を引き続き強化しながら、MASLDをはじめとする生活習慣関連肝疾患にも適切に対応し、重度肝硬変・肝がんに対する最新の治療を提供することで、肝疾患の予防・診断・治療において先進的な役割を果たしてまいります。